『宗教の経済学』を読んで

統一教会の話題が盛り上がっている今、宗教について知りたくて読んでみた。

 

主にキリスト教に本腰を置いた内容だけど、イスラム教や仏教、ヒンズー教ユダヤ教そしてカルト宗教にも触れている。それぞれの宗教の歴史的背景と、その宗教がいかに経済資本となっていったかをざっくりと説明している本だった。聖書を読んだことが無くても、無宗教の人でも読みやすいのではと思う。

 

新鮮な見解箇所がいくつかあったので書き留めて振り返ってまた学べるようにしとく。

 

宗教(特にプロテスタント)がもたらした識字率の向上や学校への投資は経済発展を促したのは有名な話。ユダヤ人に優秀な人が多いとされるのは聖書を読むこと・祈ることなど言語関する訓練を幼少期に行うことが関係しているのは想像に難くない。

 

ただ、ある程度経済発展をした先進国では特定の信仰を持つ人が減り続け、正式な礼拝に行く頻度が少ないほど経済発展しているという統計がある。また、アメリカでは新たな宗教が生まれ、自分にあった宗教を選択する傾向にあるという。

 

「礼拝へ参加すること=経済の発展をもたらす」という関係性は特に産業革命期の捉え方で、今では「信仰心がある(≒礼拝へ参加する)=経済発展をもたらす」といった具合に変わってきているのだろう。

日本は無宗教と言われるけれど、天国や地獄を信じている人は多いだろうし何か悪いことをすると天罰的な何かを受けるかもしれないという認識は一般的に受け入れられている。経済大国アメリカで新興宗教が盛んなのは、下地となる信仰心があるからとも言える。

 

社会的強制を受けない信仰心が職業倫理をもたらし、経済発展へと繋がっている可能性を示していて斬新だなと思った。

 

イスラム教圏の経済力を思い浮かべると、石油がとれる国は豊かだけれど、その他は戦争や政治不安が起きていて豊かさをイメージすることがあまりないよう思う。

GDPからも、西欧と比べて経済力に差があるのは一目瞭然。とはいえ、12世紀までは栄えていて、科学や哲学はアラブ諸国から西欧に輸入された歴史がある。なぜここまで経済発展に差が出てしまったのか。

 

産業革命に乗り遅れただけかと思っていたが、イスラム教の教えに忠実であることに重きを置き、西欧でプロテスタントが産まれたような内からの改革への道を閉ざしたことが原因の1つだそうだ。

 

また、企業法というものが存在しないのも大きな要因のようだ。ある集団の中で亡くなる人が出ると、組織の継承ではなく解体しなければならないという。1世代で終わる組織では職人を育てることも難しく技術が途絶えるのはやむを得ない。

 

イスラム教について、1つ知識を得た箇所だった。

 

近年カトリック教会による聖人とされる人が増えていること。

今までの聖人はイタリアの人が多く、西欧に偏る傾向にあったが、近年では南アメリカやアジアからの要望が増えグローバル化が起きているという。また全体の聖人件数も増えており、積極的な信者獲得の狙いがあるようだ。

 

日本人で聖人になるような人が出たら、信者数は増えるのだろうか…?

 

カルト宗教に関する箇所では、政府打倒などを目的とする世俗的暴力と、暴力そのものを目的とする宗教的暴力を分けて考える見方を提示していた。宗教が関わっている戦争や事件がなぜそこまで暴力的なのか不可解だったのがスッキリとした。