『女神』著者:三島由紀夫 出版:新潮文庫

三島由紀夫の作品は耽美、妖艶、貴族趣味。

今回読んだ『女神』も結末以外は期待を裏切らなかったです。

 

・依子について

かつては美貌に溢れ夫の愛を一身に受けていたが、戦争によって火傷を負ったことをきっかけに人目に出ず引きこもった生活をしている依子。彼女は、父親の愛情の全てを受けている娘・朝子への嫉妬から娘の恋い焦がれている画家の斑鳩を利用し仲を引裂く。

嫉妬と無念に支配された醜さの権化のような人をきれいな言葉で伝えられるのがすごいと思った。

 

・朝子について

朝子は偶然助けて知ることとなった画家斑鳩のことを恋い慕いながら、見た目も財産も申し分ない俊二からの求婚に承諾する。恋する乙女の心の揺れ動きが甘酸っぱく感情移入でき、美しく羨望の目を持って見られることに慣れた女性の仕草が具体的に書かれているわけではないのに想像ができて愉しく読めた。

 

・周伍について

周伍が妻依子の火傷の後、理想美への執着が妻から娘へと移り、過剰な要求を抑えられない部分はさすがに気持ち悪く、三島由紀夫作品だからといって昇華させるには無理がある結末だった。

 

結末はさておき、

汚らわしい部分も艶やかでした。

 

全然関係ないけれど、戦後の舞踏会がまだ開かれていた頃のファッションが気になる。

もしかして超エリートクラスなら、今も舞踏会してるのかもしれないけどね。