読書感想文『おしまいの時間』 著者 狗飼恭子さん

『おしまいの時間』を読んで

 

3年前に教わった、さほど関わりのなかった学校の先生の死によってもたらされた3人の不思議な人間関係。それぞれ自身の問題を抱えながらも、チグハグな人間関係の中で励まし合い、時には傷つけ悲しんで、それでも前に進んでいかなければならない現実に立ち向かっていく、サクセスヒューマンストーリーでした。

 

文豪の凄さについて今まで特段考えもせずに読んできたのですが、今回、作家になりたての方の作品を読んでみると(狗飼さんが22歳のときに書かれた初期の作品だそうです)、文豪作家との表現力の違いが顕著に分かる作品でした。

 

その文章の中で含まれる心の中で起きているニュアンス的な(自身の現実世界で同様の状況に置かれたとして、あとから振り返ってみた時に自身でもその心の動きがいったい何だったのか説明がつかない)心情を情景描写で表現したりするような、とてつもない表現力でものを書かれている文豪作家の凄さと比べると、ストレートな表現で、その心情になる背景の説得力に欠け、突然その感情にストーリーをもっていっている感じがしてしまいなかなか素直に感動したり、悲しくなったりというのが難しい作品でした。

 

もっと私が中・高校生くらいの若い頃に読んでいれば、主人公の置かれた状況を身近に感じられ、涙無しでは読めない作品だったのかもしれません。ある程度人生経験を積み、あらゆることを真剣に受け止めていくことから、受け流しの術を身につけていってしまい、ストレートな繊細な感情に、ものすごく無頓着になっていったのかもしれません…。

最近は自身の年齢を感じることが多くなってきましたね(´Д`;)

 

身体は止む終えないですが、感じ方くらい、若々しくいたいものです。