映画の感想『39 刑法第三十九条』監督︰森田芳光(1999年公開)

凶悪な事件が起き、裁判の経過が報道される時によく耳にする「精神鑑定」というワード。刑を軽くするための逃げ道のように受け止められることも多いでしょうし、私自身、殺人などを起こした凶悪犯の減刑に繋がる「精神鑑定」には疑問を抱いています。

 

この映画の中では、まさにその「精神鑑定」の判断の曖昧さを浮き彫りにした映画です。

 

胎児を含む3人を殺害したとして逮捕された男の精神鑑定の結論は、鑑定医が変わることによって覆され、「多重人格」は綿密な計画をもって犯行をしようと試みた「詐病」であることが明らかとなりました。

 

しかし、真実は犯人にしか分からないものであることを踏まえると、「詐病」という判断もまた、(裁判上、詐病と決まっても)疑いの余地は拭えないものでしょう。

 

裁判は真実を追求しているように見えて、実際は「法の下の平等」を1番に追求している欠陥のある裁きの仕組みであることを改めて考えさせられる作品でした。

 

内容はもちろんですが、

何よりも感動したのが、全体的に静かで物悲しい演出のなか、俳優 堤真一さん演ずる多重人格者の、矛先を失った強烈な怒りをあらわにしたおどろおどろしい姿は圧巻の迫力で、演技の凄さに感動しました。

 

この映画は、今の裁判制度が抱える問題点をテーマにしていますが、心情に寄り添っているので理解しやすいと思います。雰囲気や演出も凝っているので演劇を愉しむような感覚で観られるのではないでしょうか?

 

今のところAmazonPrimeで観れるようなので、気になる方はチェックしてみてください♪