『熱源』を読んで

なんて悲しい物語なのだろう。

ただ、人として日々の生活を淡々と送りたいだけなのに、土足で上がってきた列強国に住む場所を奪われなければならないなんて…。

 

日本が引き起こした戦争は、朝鮮半島や中国、フィリピンを初めとする諸外国敵地侵略(もちろんそこに住む人たちの故郷を殺戮の地にしたことには何ら違いはないのだけれど)を指しているように思っていたけれど、北海道や樺太で起きていた戦争は敵国でも同族でもないマイノリティーだからこその問題を孕んでいて、今の今まで日の目を見ることもなく消えていってしまった故郷への記憶が多くあるのだと思うととても悲しくなった。

 

個人の努力では抗えない戦争は、人が人らしく生きることを難しくしてしまった。私が半世紀生きた頃には第二次世界大戦から1世紀経つことになるんだけど、アイヌ以外にも今でも幸せを侵害されているマイノリティーが無数に存在していることが悔しくなった。無いものとして扱うことが無意識・無自覚・無知によるもので、解決するのに当事者が少なすぎて解決までのハードルがめちゃくちゃ高くなることも踏まえて、目を向けるよう意識していきたいと思った。