『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』 若松孝二監督

■観たきっかけ■

三島由紀夫防衛庁で割腹自殺をしたということは知っていたが、世間からしたら文学界で成功を収めている彼がなぜ壮絶な最期を選択したのか疑問に思っていたのでこの映画を観てみた。

 

■感想■

舞台となる1960年代の日本は、学生運動共産主義者による暴動など、主義や思想が混沌とした荒れ狂う時代であった。三島由紀夫も常日頃から暴動(革命)の機会をうかがっており、士気を同じくする学生らと盾の会を結成し活動に励んでいた。会の趣旨は、日本人のアイデンティティーとして、天皇を神として崇め、武器は必ず刀のみで戦うといった「武士道」の精神に忠実なものであった。三島はこの精神を自衛隊に求めたのであった。

 

とはいえ、戦後の日本では「武士道」はすっかりと廃れ、自衛隊シビリアンコントロールのもと、個人の意思で武力を行使することは不可能であった。戦後の日本の社会が変貌を遂げている事実は、三島にとって受け入れ難い現実であり、もはや覆すことはできないと気づいていたのだろう。自らの命をもって武士道を後世に伝えていくことを選んだように思えた。

 

歴史的背景を完結に理解する上では、この映画は役に立つものであった。

 

しかし、鉄道沿いの真新しいフェンスや、おそらく80年代に建てられたと思われる建物が車での走行中のシーンに映っていたりなどして集中力が途切れてしまった。また、三島の晩年は肉体美を追い求め、かなり鍛え上げていたと思うのだが、あまり役者さんは鍛えていないようで残念だなと思ってしまったりなど、この映画で感動することはできなかった。